第8回 現代日本社会における幸福の構造 ②近代幸せモデルと消費社会

2012年04月11日
三菱総合研究所 参事 亀岡 誠

東日本大震災をきっかけに、「絆」という言葉がクローズアップされるようになった。近代化を進める中で「個」を優先してきた日本人が再び「絆」に目覚めたのだろうか。そんな論調の解説をよく目にする。しかし、近代化が一方的な絆の喪失プロセスであったかと言えば、そんなことはない。

たしかに近代化によって日本人は農村地域の「伝統的な絆」から抜け出していった。「向都離村」と言われたように、高度成長期とは、農村地域の次男三男を中心とする若者が次々と都会へ出てくるという大移動時代でもあった。しかし都会に出てきた若者たちはその後、砂粒のようにバラバラになってしまったのではない。学校に入る、会社に就職する、結婚して家族を作るといったやり方で新しい人間関係、新しい絆を作っていった。近代化とは、「近代的な絆」の創出プロセスであったという見方もできるのである。

この続きを読むにはログインしてください