第9回 現代日本社会における幸福の構造 ③ちょっとした絆による新しい幸せモデル

2012年04月18日
三菱総合研究所 参事 亀岡 誠

戦後の日本は「伝統的な絆」を中心とする社会から「近代的な絆」を中心とする社会へ変化してきた。伝統的な絆は先祖代々の土地や家柄を拠り所にしたのに対して、近代的な絆は学校、会社、家族(核家族)という組織への所属を拠り所にする。しかし前回述べたように、この近代的な絆も1990年代以降に大きく動揺する。そこで、これからの社会で注目したいのが第三のタイプの絆だ。それは、隣人関係、友人関係、趣味の仲間、寄付や社会貢献などによる「ちょっとした絆」である。

ちょっとした絆は、とりわけ高齢者と若者にとって重要な絆だ。子育てを終え、会社を退職した高齢者は、近代的な絆の出口まで来てしまったことになる。一方、就職氷河期の続く若者たちは、近代的な絆の入口付近で足踏みしていると言えるだろう。このように「よい学校を出てよい会社に入ればよい家族を持てて幸せになれる」という近代幸せモデルは、入口付近と出口付近での動揺が大きい。ここでは、出口付近の高齢者に焦点をあてた「隣人の絆」「友人の絆」と、入口付近の若者に焦点をあてた「同好の絆」「社会の絆」を簡単に説明しよう。

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