第18回 ニューノーマル時代の『住まい』を考える ③住まい産業の行方

2012年10月04日
三菱総合研究所 主任研究員 吉池 基泰

 これからの住まい産業は、人々の多様なニーズやライフスタイル、価値観に合った「居場所」を提供していくことが大切であると考える。例えば、ある若者が「社会起業をして、コワーキングスペースを利用して、いろんな人たちとつながりたい。でも、月に1回は気分転換に日本を出て、海外でゆっくり過ごしたい」というライフスタイルを実現したいと考えているとする。

 それに対し、これからの住まい産業は、自社が生産あるいは施工可能な「ハコ」の範囲にこだわらず、第三者のリソースも含め、様々な選択肢の中からその人に最適な居場所(コワーキングスペース、タイムシェアなど)を提案できる存在になっていて欲しい。つまり、住まい産業がエージェント的役割を果たし、人と居場所をつなぐ、いわば“ネットワークデベロッパー”になるべきだと考える。これを将来の住まい産業が目指す姿として提言したい。
 しかし、現在の住まい産業は、世帯数の減少などによる「新築需要の縮小(新しい住宅が不要)」、既に述べてきた「低所得化(高い住宅が売れない)」、世 帯当たり人員の減少による「住宅面積の狭小化(広い住宅が不要)」という三重苦に直面している。こうした状況で、すぐにネットワークデベロッパーへ転換し ていくことは困難であろう。
 そこで、持続的成長のために、短中期的に取り組むべきテーマ(事業拡大のヒント)を“アンゾフのマトリクス”を活用して示す。

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