第7回 現代日本社会における幸福の構造 ①幸福感と絆と消費の関係

2012年03月26日
三菱総合研究所 参事 亀岡 誠

昭和レトロブームの火付け役になった映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の最新作(シリーズ三作目)が今年公開された。映画の中で町医者の宅間先生(三浦友和)が「幸せって何だろう。豊かさや便利さのことだろうか」と呟くシーンがある。「貧しくても幸せ」という図式に多くの人はロマンを感じるものだし、「幸福はお金で買えない」という教訓に多くの人は共感する。しかし本当のところはどうなのだろうか。

実際に調査をしてみると、残念ながら、収入の高い人ほど幸福感も高いという結果が出る。ただし一定の金額を超えると収入の増加は幸福感にほとんど影響を及ぼさない。これは一国の1人当たりGDPと平均的な幸福感の関係にも当てはまる。世界には、経済成長によって今よりも幸福になれる国と、もはやその効果の見込めない国がある。やや古いデータ(1999年)であるが、経済学者のリチャード・レイヤードは、その境界線を1人当たり実質GDP(購買力平価)で20,000ドルあたりとしている。欧米や日本のような先進国は後者のグループに属する。

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